転調の場所がよくわからない曲
浜崎あゆみの「YOU」という曲があります。
1998年に発売された浜崎あゆみ2枚目のシングル曲です。聞いたことがない方は下の動画からぜひ一度お聞き下さい。
この曲の移動ドを考えてみると、まずイントロのギターのフレーズからロ長調で始まってるなということが分かります。
(ロ長調はドイツ式表記ではH-Durで、変ロ長調がB-Durになるのですが、このあとコードネームのBが出てきてややこしいので以下調は日本語表記にします。)
その調のままAメロが始まり、以下のとおりに進みます。
君のその横顔が
mmmrs-t dtdr-
悲しい程キレイでmmmrs-s mrdt-
問題なのはその次のフレーズ。
何ひとつ言葉かけられなくて
気付けば涙あふれてる
きっとみんなが思っているよりずっと
キズついてたね 疲れていたね
気付かずにいてごめんね
この部分でどうも嬰ヘ長調(Fis-Dur)に転調しているようなのですが、
転調の始まる歌詞が『何』なのか、『言葉』なのか、『かけられなくて』なのか、はたまた別の場所なのかちょっと判別しかねるのです。
もしもフレーズ頭の『何』から転調しているとするとこんな移動ドになります。
何ひとつ言葉かけられなくて
f-s-l-dd- s-dd- l-dd-r-r-dd-
気付けば涙あふれてる
l-dd-d-s-dd- m-f-m-r-d-
♭や♯が出てこないので一見自然に転調しているように感じられます。
ただ、引っかかるはこの『何』の部分が弱起であり、直前の『キレイで』と同じ小節にあるということです。
さらに、実はこの曲のコード進行、冒頭の『君のその横顔が』から『気付けば涙あふれてる』までの8小節間ずっとB→F♯→G♯m7→F♯の繰り返しなので
伴奏を聞いているだけでは転調を感じ取れないのです。
私の頭の中ではこんな感じになります。
悲しい程キレイで 何
mmmrs-s mrdt- dr
ひとつ言葉 かけられなくて
m-ss- r-ss- (…アレ?転調した?) l-dd-r-r-dd-
なぜこのような現象が起こるかちょっと理論的に考えてみましょう。
コード進行B→F♯→G♯m7→F♯は、ディグリーネームで書くと
ロ長調においてはⅠ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅴとなり、
嬰ヘ長調ではⅣ→Ⅰ→Ⅱ→Ⅰとなります。(mとか7は省略してます。)
ロ長調でB→F♯→G♯m7→F♯が弾かれた直後に再びBが現れたとき、
嬰ヘ長調のⅣと捉えるよりもロ長調のⅠと捉えるほうが自然です。
なぜならドミナント(不安定)であるⅤはサブドミナント(やや不安定)のⅣよりもトニック(安定)のⅠに行きたがるからです。
(断定口調で言ってますが正直この考察に自信はありません・・・)
さてここでメロディとコードの対比を見てみましょう。
まずはAメロ前半(ロ長調)。
君のその横顔が
Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅴ
mmmrs- tdtdr-
悲しい程キレイで
Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅴ
mmmrs-s mrdt-
確かにドミナントのⅤには次に続きそうな感じの移動ド(赤字にしたrとt)が割り振られていますね!
次にAメロ後半(とりあえずすべて嬰ヘ長調と仮定します)。
何ひとつ言葉かけられなくて
Ⅳ→Ⅰ→Ⅱ→Ⅰ
f-s-l-dd- s-dd- l-dd-r-r-dd-
気付けば涙あふれてる
Ⅳ→Ⅰ→Ⅱ→Ⅰ
l-dd-d-s-dd- m-f-m-r-d-
トニックのⅠに終わる感じの移動ド(d)がついていて、Aメロのフレーズをまとめるような雰囲気が出ています。
どうやら2小節ごとに区切ったフレーズの締めくくりを見る限り、
『何ひとつ言葉かけられなくて』の後半部はやはり嬰ヘ長調のようです。
では前半部は!?
個人的にはやっぱりここはⅤの次にⅠを持ってきたいのでロ長調ですかね。(上記の「私の頭のなかでは〜」の通り。ほぼ直感。)
つまり『言葉』まではロ長調、『かけられなくて』以降が嬰ヘ長調 というのが個人的な見解です。
ここまでちょっとかじった程度のガバガバ音楽理論で勝手に移動ドを考察してきましたが、
「ここ違うだろ!」とか「私は別の場所で転調してると思う」という意見がございましたらどしどしコメントいただけるとありがたいです。